Shakespeare’s Sister

*今日は筑波大学東京キャンパスで開かれた、シェイクスピアに関する講演会に行きましたよ。「MANGA・シェイクスピアに見る文化の移動と変容」というタイトルです。比較文学英米文学の人たちが科研費を取って、というプロジェクトのようですね。

*前半はイギリスのSelf Made Hero社から出ている「MANGA SHAKESPERE」シリーズについて、出版社の方と作家二人の講演でした。ヨーロッパのコミックであるGraphic Novelではなく、アメコミの形式でもなく、manga形式で描いているんだそうで。「Hamlet」は未来のサイバーパンクな世界が舞台で、「Romeo and Juliet」は現代日本が舞台になっています。舞台設定は違えど、教育目的にも使うため、台詞は極力原作通りにしているそうで。
 作者はいずれも20代前半と思しき若い女性で、「Hamlet」の作者のイタリア生まれのVieceliは赤ロリ、「Romeo and Juliet」の作者の中国系に見えるLeongは黒ロリという感じの出で立ちでしたね。
 内容は日本の漫画に比べればまだあらが目立ちますし、ロミオはビジュアル系Jロックのボーカリスト、ジュリエットは変な着物を着ているなど、日本人から見ればちょっと笑ってしまうような設定があります。ですがコマ運びや漫符の使い方、キャラのディフォルメの仕方など、結構ちゃんとマンガになってます。聞いてみたところ、イギリスで初の同人誌サークル「Sweatdrop」を作り、同人誌を作ったりコスプレをしていく中で、manga形式でシェイクスピアを描くというプロジェクトに参加したんだそうで。「萌え」はもう当然のように使っていますし、ボーイズラブなんかも大好きだそうで。私はボーイズラブが大好きなんだというと、"Oh! I love boy's love very well, too"と楽しそうです。日本的な視覚文化がもたらす萌えの姿は万国共通なのかもしれないな、と非常に興味深く思ったのでした。

*後半は日本人の方の発表です。漫画評論家藤本由香里さん、少女漫画研究の大城房美さん、これまた少女漫画研究のヤマダトモコさん。この中では特に藤本由香里さんの発表がグッときましたね。少女漫画に繰り返し描かれるテーマである、トランスジェンダー、同性愛、双子の関係、主体的な女性のありさまは、シェイクスピアをはじめとする劇中劇によってはっきり描かれるというものです。「アリエスの乙女たち」「アプローズ」「櫻の園」「青い花」…そういや劇中劇は少女まんがにつきものですし、それは強いメタファーとして機能します。なるほど日本の視覚文化におけるシェイクスピアの受容は、こういう形もあったのかと、ハタとヒザを打ったのでした。